ブログ34 9月の行事 重陽の節句
ブログ34 9月の行事 重陽の節句
みなさんこんにちは。今回からは9月の行事などをテーマにしてまいります。
初回にあたる今回は、「重陽の節句」についてご紹介しましょう。
そもそも「重陽」の「陽」とはなんでしょう。
中国から伝わって日本に定着した文化や思想の一つに「陰陽思想」があります。「陰陽」は「いんよう」「おんみょう」「いんやん」など、いろいろな読み方をするようですが、簡単に言うと、森羅万象すべてのものを互いに引き合う、相対するものとして、陰と陽に分けるという考えです。
例えば 男は陽 女は陰
天は陽 地は陰
樹木は陽 草花は陰
太陽は陽 月は陰
: :
そして、奇数は陽 偶数は陰 です。
男は陽、女は陰、と言われると男女差別ではないかとお思いになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「陰」「陽」は優劣や善悪を表すものではないのです。「表裏一体」という「二つで一つ」と考えた方がわかりやすく、伝わりやすいかもしれませんね。
ただ、やはり「陽」の方がパワーというか「気」が強いのは確かです。「気」が強い月にあたる奇数月は「邪気」や「病気」も強いということで陽の月には「邪気払い」の意味を込めて節句をやるようになりました。それぞれには邪気払いのために飾ったり食したりする季節の植物がありますね。
代表的なものは五節句と言われ、以下の通りです。江戸時代に五節句として幕府が制定してから、やがて庶民へと広まって、おなじみの「お節句」となっていきました。そしてこれは明治政府がこれを廃止するまで続いていきました。
1月7日 人日(じんじつ) 七草
※註:1月1日は元旦で特別な日なので1月のみ7日)
3月3日 上巳(じょうし) 桃
5月5日 端午(たんご) 菖蒲
7月7日 七夕(しちせき) 笹
9月9日 重陽(ちょうよう) 菊
これらはすべて旧暦(月の満ち欠け)の考えです。大体は新暦(太陽)のひと月遅れの頃と思えばわかりやすいでしょう。ちなみに今年(2019)の旧暦の9月9日は新暦カレンダーでは10月7日です。新暦の9月9日はまだまだ残暑も厳しく、秋の行事をする気分ではないかもしれませんが、10月ともなれば菊の花も咲く頃となり、昔の重陽が菊と結びつくのも納得です。
さて、ここで面白い話があります。
本来陽が重なる、最も「気」の満ち溢れる「重陽の節句」は一番重要な節句にもかかわらず、日本では他のお節句に比べるとあまりなじみがありません。
これは「九は苦を連想させる」「苦が重なる九月九日はあまり縁起がよろしくない」「九よりは八の方が末広がりでめでたい良い数字だ」と否定的にとられていたためです。言葉選びの好きな、いかにも日本人らしい発想だと思いませんか。
とはいうものの、「菊のお祭り」は今も各地で行われています。
菊人形や菊花の品評会が神社や寺院の庭で華やかに行われているのを、皆さんも一度は見たことがあるでしょう。
私は子どもの頃、千葉の谷津遊園に菊人形を見に行った記憶があります。頭だけのマネキンに色とりどりの小菊の着物を着せて、武士やお姫様が無表情に並んでいるのは、きれいと言うよりちょっと恐いなあと思って見た覚えがあります。
皆さんの記憶の中にある菊人形はどんなイメージでしょう?
ためしに「菊人形が見たい」で検索すると、有名な所として「福島の二本松」「大阪の枚方」「東京の湯島天神」が三大名所とされているようです。私も久しぶりに菊人形を含めて、どこかの菊まつりに出かけてみようかしらと思っています。
執筆者 協会認定マナー講師 清水法子
受講動機:
15年程前に着物の着付けと同時に「和服和室を中心とした和の礼法」講師の資格を習得致しましたが、偏った知識だと感じ、子ども達の生活に密着した現代のマナーを知りたいと思い受講致しました。