ブログ16 春の京都 旅のマナー
ブログ16 春の京都 旅のマナー
私はいま関東地方に住んでいますが、京都の出身です。
先日、桜の盛りを目指して里帰りを計画。今回は見事にタイミングが合い、満開の桜に出会うことができました。そして、ある時は友人と、ある時は母と、桜の名所を訪ね、1日平均2万歩も歩いて、めいっぱい楽しむことができたのです。
私の子どもの頃の京都はのんびりした街でしたが、今や京都は一大観光地。至る所に世界中からの観光客があふれています。そして、その観光客のマナーの悪さが取りざたされることも多くなってきました。
しかし、今回の里帰りでは、とてもうれしい場面にばかり遭遇しました。
今回はそのやさしい思い出を皆さんと共有させていただきたいと思います。
まず、桜の名所に向かうバスの中でのこと。
乗客は地元の人よりも観光客の方がはるかに多かったのですが、満員のバスの中で、お互いに気を遣い合い、気持ちよく乗っていることができたのです。
大きなカバンを持っている人は邪魔にならないように持ち直す、お年寄りにはさっと席を譲る、途中で降りる人にはスペースをあけて通りやすくしてあげる・・・・・・。そんな光景が車内のあちこちで見られました。そして、そんな時、「すみません」「ありがとう」「Thank you」と、感謝の言葉が聞こえて、車内はとても和やかで心温かな雰囲気に満ちていたのです。
また、境内が満開の桜であふれかえるようなお寺の境内では、写真を撮るのに立ち止まる人があちこちに。
そこを通りかかった人たちは、ポーズをとっている人を見かけたら、歩みを止めて待っていてあげます。そうすると、写真を撮り終えた人が「すみませんでした」「Sorry」「ありがとうございました」とお礼を言い、待っていた人も「いえいえ」「どういたしまして」などと笑顔で応じていました。
こうしてたまたまご縁があって行き合った、見知らぬ他人同士だからこそ、お互い声をかけ合うことが大切なのだなあと、改めて気付かされたできごとでした。
そして、京都の春は花街の『おどり』の季節でもあります。
私は、代表的な花街の一つである、 上(かみ)七軒(しちけん)の舞妓・芸妓さんによる『北野をどり』という公演を鑑賞しました。もちろん、ここにも多くの観光客が訪れていました。
ここでは開演前にお茶席でお薄(抹茶)をいただきます。たまたま私の隣はアメリカ人の一家で、もちろんお抹茶を頂くのは初めての経験だとのこと。そこで、拙い 英語ではありましたが、ごく簡単にお作法をお教えしたのです。
少々出しゃばり過ぎたかしら? と思いましたが、説明する度に「Thank you」と笑顔で答えてくれて、私がなんとかして親切にしたいという気持ちが通じたのがうれしく、美しいおどりと共に楽しい思い出になりました。
最後に、帰路の新幹線でもうれしいことがありました。指定席に腰を下ろしホッと一息ついた時のこと・・・・・・。
前の座席の20代前半とおぼしき女性が後ろを向き、「少し座席を倒してもよろしいでしょうか?」と声をかけてくださったのです。
今は黙ってシートを倒す人が多いと聞きますのに、まさかこんなに若い女性がきちんとことわってくれるとは思っていませんでした。それで、すっかり感激してしまい、「もちろん! どうぞ!」と笑顔で答えました。
楽しかった旅の終わりは、彼女のひと言で気持ちよく締めくくることができたのです。
間もなくゴールデンウィーク。今年は即位の礼に伴い、10連休になるということで、この期間に旅行をなさる方も多いでしょう。
今回私が経験したように、ちょっとしたひと言や、小さな心遣いでご自身や旅のお仲間だけでなく、周りにいるみなさんも気持ちよく過ごすことができます。これらはつまり、相手を思いやる気持ち。
せっかくの旅行ですから、どうぞ楽しい思い出とともにお帰りください。
協会認定マナー講師 安達裕世
◎マナーとは他人へのおもいやり。日々の生活の中で自然に身につけるのが一番です。とはいうものの、私自身「知らない」「わからない」ことがたくさんありました。若くして身につけたマナーは一生ものです。自戒も込めて、子供たちに伝えたいと思い、養成講座を受講しました。