ブログ3 芸術の秋 「音楽会」
ブログ3 芸術の秋 「音楽会」
今月は秋にちなんだマナーをテーマに書かせていただいています。「スポーツの秋」「食欲の秋」ときて、3回目の今回は「芸術の秋」にちなんで、“音楽鑑賞のマナー”について考えてみたいと思います。
ただ、今回取り上げる音楽鑑賞は、プロの演奏家によるピアノリサイタルやオーケストラといった本格的なものではなく、お子さんたちが日々練習を積んできた成果を発表するような音楽会でのマナーです。こういう音楽会は、身近なホールなどを利用して開催されることも多く、服装も気分も、本格的な演奏会に行くよりは、気軽に出かけられることと思います。
数年前、私もわが子の晴れ姿を見ようと、地域の大きなホールに複数の小学校が集まる合唱コンクールに出かけたことがありました。開演前に会場に入り、小さなお子さんを連れた方を含むグループの近くに座ったのですが、その子が「合唱なんて面白くないから早くお家に帰りたい」とぐずって、お母さまを困らせていたのです。
私を含めた周囲の人たちは、「このまま合唱の間もぐずり続けられては、せっかくのコンクールが台無しになってしまう」と心配していたのですが、最初のプログラムが始まると静かに耳を傾けるようになり、ホッと胸をなでおろしました。そしてそこからは、子どもたちの澄んだ歌声に心を洗われ、指揮をする先生を真剣に見ながら歌う姿に胸を熱くして引き込まれていきました。
ところが、その集中を断ち切るように、急に近くから「カシャ、カシャ」と連続してカメラのシャッター音が聞こえてきたのです。それは、先ほどぐずっていたお子さんが、お母さまのスマートフォンを使って写真を撮影している音でした。残念ながら、お母さまも、近くのお仲間も、それをたしなめる様子は見られませんでした。そして、それによって感動がすっと冷めてしまったのです。
カジュアルなコンクールとはいえ、私を含め、わが子の晴れ舞台を見たいと集まった人たちには、二度と見られない大切な演奏や演技です。このお母さまも、きっと上のお子さんの発表を見に来られていたのでしょう。そして、写真を撮らせておけば下のお子さんが静かにしていられるなら、そのままにしておこう、さらに言えば下のお子さんが撮った写真も、記念になると思われたのかもしれません。でも、集中して鑑賞したい気持ちを断ち切るシャッター音は、周囲の方たちへの配慮が足りなかったと思います。
やむをえず、小さなお子さんを連れてこういう場に出かけるときには、あらかじめ静かにするようにお約束をしておくのはもちろん、お気に入りの絵本やおもちゃ(音の出ないもの)を持たせるなど、準備をしましょう。そして、それでも静かにしていられないようでしたら、自分は鑑賞を諦めて、お子さんを連れて一旦会場の外に出るというのもマナーとしての選択肢ではないかと思います。お互いに気持ちよく鑑賞できるように、配慮しあいたいものですね。
では、次回は「読書の秋」にまつわるマナーをテーマに考えてみたいと思います。
協会認定マナー講師 原田かおり
私は「子供自身が自分の優しさに気づき、思いやり・感謝・尊敬の気持ちで行うマナーズを身につけておくことが大切である」という協会の思いに共感し、少しでもこの活動に貢献したいという気持ちから、養成講座を受講しました。